11月6日(木)18:00~20:00迄、下北沢の北沢タウンホールにて「定期借家積極活用術」の講演をさせていただきました。
私の仕事は主たる業務が「リロケーション」(転勤される方の留守宅管理)ですので、所有者が転勤から帰るまでの期間限定の賃貸借となります。
結果、期間を定めての契約ですので、全ての契約は平成12年3月1日に施行された定期借家法に則って行っています。
昨年国土交通省が、不動産会社・貸主・借主を対象として行った定期借家のアンケートによると、居住用の契約では施行から8年も経っているのに、未だに普及率は5%という結果になっていました。
私の会社では普通のアパートも含めて9割以上は定期借家を使って契約しています。
従来からの普通賃貸借は、借主は契約条文により「1ヶ月前の予告で解約」出来るのが一般的ですが、貸主側は法律上「正当事由」が無いと契約を終了させることが出来ません。
これは戦前戦後の住宅が不足していた時代の名残で、住宅が余っている状態の現代では貸主・借主の権利が不平等となっていました。
定期借家は貸主にも正当事由なしに契約を終了させる権利を与え、これで貸主・借主が平等に権利を主張出来る環境が整い、やっと欧米並みの借家制度が出来たのですが、「結果は普及率5%」。
何とも情けなく、非常に悲しい話です。
旨く利用すれば貸主側にも借主側にも、双方にメリットのある借家制度なので何とか普及促進が進み、使い勝手の悪い部分を手直しし、より良い制度になればと願っていました。
しかし普及率が低いが為に、施行当初は4年後(平成16年)を目処に見直しがなされるはずだったのですが、未だに制度が改良されていません。
そんな矢先、宅建協会世田谷区支部の東部地区さんから「地区会員の為に定期借家セミナーを開催したいので講師をお願いしたい」とのお声がけをいただき、今回の定借セミナーの開催となりました。
お聞きしたところ東部地区さんは所属会員約70名ほどの組織だそうですが、集まって下さった会員さんの数は過半数を超えておりました。
それだけ皆さん、定借のことを知ってはいるが、新しいビジネスチャンスとしての定期借家に興味をお持ちなんだと、私自身資料作りにも熱が入った次第です。
最後に国土交通省の意識調査でおもしろい結果が出た部分をご紹介します。
不動産会社への意識調査では、「定期借家を今後活用する」との回答はたったの2.5%でした。(場合によっては活用するが72.1%)
その理由として過半数の人は「賃借人にとって魅力が無く空き家になるから」と回答しています。
しかし、賃借人へのアンケートを見てみると、約6割の人が「気に入った物件が定期借家だった」と答え、約4割の人が「敷金・礼金等の一時金が安かった」と答えています。
その一方で定期借家にしなかった理由としては
- 物件退去の時期が未定:5.4%
- 適当な契約期間の物件が無かった:4.8%
- 適当な立地・広さの物件が無かった:2.9%
- 家賃が普通賃貸借よりも高かった:1.6%
と続き、定期借家にしなかった理由は全てが数パーセント以下で、定期借家を嫌っていない事がよく解ります。
また、気に入った物件が定期借家だったと答えた方が6割いるということは、定借にしなかった理由と同じく、賃借人側は「定借と普通賃貸借」をそれほど意識しておらず、「契約形態よりも物件の善し悪し」の方を大切にしている事がよく解ります。
不動産会社側・家主側がユーザー心理をもう少し理解し、より良い物件が市場に出るように努力する必要があるのではないでしょうか?